【書評】「線は、僕を描く」伝統の水墨画を通じて人間の内面を描く物語【あらすじ/感想】

書籍
「2020年本屋大賞」第3位!
「ブランチBOOK大賞2019」受賞!
「未来屋小説大賞」第3位
「キノベス!2020」第6位
華々しい賞歴すぎる今回紹介する「線は、僕を描く」という作品。

「水墨画」は伝統文化なのは知っているけど、難しそう。初心者が読んでもどうせよくわからない。なんて思っていませんか?

実はぼくも、そう思っていました。でもそれはまったくの勘違いで、「線は、僕を描く」は水墨画に親しみがない人でも、楽しめる素晴らしい作品です。

ずーっと読みたいと思っていた「線は、僕を描く」をようやく読めたので(さらにはAudibleで聞いたので)興奮が冷めないうちに感想記事を書きますね。

ぼくは小説を年間50冊くらいは読むのですが、ここ半年読んだ中でも1番といっても過言ではないくらいに好きな作品でした。

記事を読み終えて、「線は、僕を描く」この機会に読んでみようかなと思う人が少しでも増えると嬉しいです。
「線は、僕を描く」をおすすめしたい人
①日本の伝統芸能「水墨画」・アート作品に興味がある人
②心があたたかくなる、ハートフルな物語が好きな人
③現実がなにかうまくいかずに前に進めず、モヤモヤしている人いや、でも「線は、僕を描く」はどんな人にも読んで欲しい!推せる作品です!

この記事で紹介する「線は、僕を描く」は「Amazon Audible」という本が聴けるアプリで聴くことができます。30日間無料体験ができる上、人気作品も1冊無料で読めるので、試したことがない人はぜひデビューしてみてください。
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「線は、僕を描く」について

本の内容を簡単に紹介【あらすじ】

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。描くのは「命」。はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。

著者略歴

砥上 裕將(とがみ ひろまさ)
1984年生まれ。水墨画家。本作で第59回メフィスト賞を受賞しデビュー。

砥上さんの言葉:
この物語はフィクションではあるのですが、僕が水墨画を描く上で大切に思ってきたことがたくさん詰まっています。細かい技法や、筆を持つときの心の在り方、そして描き進めていくときの感覚など、こんなことまで書いて伝わるのだろうか? ここまで書いて大丈夫か? というようなことも丁寧に書いています。春蘭も菊も薔薇も葡萄も、ただ描き方を知っているということではなくて、実際に描けるようになるまで繰り返し修練してきたことを、言葉に置き換えてみました。色彩を排し、毛筆という不安定な用具を用い、描いたものを二度と消すこともできない制限だらけの絵画。それが水墨画です。そんな手法で森羅万象という複雑で巨大なものに挑み続ける時、「人ってなんだろう? 生命ってどういうことだろう? 自然ってなんだろう?」と思わずにいられなかった経験が、この小説を書きあげていく時の力になりました。それは、疑問と同時に感動を呼ぶもので、何気ない草花やありふれた景色を、心地よい気分で眺めている時と少し似ています。厳しくもあるのですが、時々ふいに優しい気持ちになれるような言葉を超えた感動を与えてくれるものでした。そんな時間を延々と繰り返した後、言葉で何かを表現するという世界の外側をウロウロとしていた人間がようやく口を開いて、実は絵を描くっていうのは結構楽しいことなんですよ? と語り始めたのがこの本です。ついでに、尊敬できる先生や、同じように絵を志す心優しい方々と出逢えた喜びも詰め込んであります。

この本を通して、自然の美しさや、伝統文化、誰かと出逢う喜び、自らに向かい合っていく静かな時間を、ほんの少し思って戴ければ著者としてはこの上ない喜びです。

▼砥上さんご自身が書いた水墨画。本を読んでからみるか、みてから読むかはお任せです。

主な登場人物

  • 青山あおやま霜介そうすけ・・・法学部の大学生。小さい頃に親を失い、生きる意味を見失っている。
  • 篠田しのだ湖山こざん・・・日本を代表する水墨画家。
  • 篠田しのだ千瑛ちあき・・・湖山の孫で、花卉画を得意とする。ヒロイン。
  • 西濱にしはま湖峰こほう・・・風景画に定評のある湖山門下の二番手。
  • 斉藤さいとう湖栖こせい・・・湖山賞最年少を受賞者。
  • 藤堂とうどう翠山すいざん・・・湖山も一目置く絵師。
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水墨画さんたちの名前は自然が入っていて、かっこいいね。

「線は、僕を描く」を読んで学んだこと

線は、僕を描くはとにかく心に染みる名言が連発です。詳しくは読んでほしいのですが、感じたことを簡単に残しておきます、

芸術は、人の心の変化に寄り添い、心を見つめてあらわすもの

『君の中にある真っ白な世界の中には、命がよく写るだろう?』
粒子だよ。墨の粒子が違うんだ。君の心や気分が墨に反映しているんだ
現象とは、外側にしかないものなのか?心の内側に宇宙はないのか?

自分の人生・経験・考え・空想をもとに、絵と向き合っていく絵師たち。常に自問自答を繰り返し、よりよい絵にするには、よりよく表現するには?と自分とも向き合っていく。

上手い画家の条件は、絵師としての技術が高いことではない。もちろん要素の一つではあるけども、技術よりも大切なものがある。

美しい水墨画を描くには、精密な形を追いかけるのではなく、生きているその瞬間を描きだすことこそが、水墨画の本質。その本質に迫るためには、人の心に敏感である必要がある。

そんなメッセージを感じ取りました。

「とりあえずやってみる」精神の大切さ

「でも、これが僕にできるとは思えません」「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」
「水墨の本質はこの楽しさだよ。挑戦と失敗を繰り返して楽しさを生んでいくのが、絵を描くことだ。」

もう一つ心に残っているのが、「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」という故山先生のセリフ。いきなりうまくやろうとするなんて無理で、まずはトライしてみようと。これはどんな世界でもいえますよね。

挑戦と失敗を繰り返して楽しさを生んでいくのが、絵を描くことだ。

はい、本当にその通りだと思います。

「線は、僕を描く」の名言

お気に入りのセリフを残しておきます。

全て、本からの引用になります。

いいかい。水墨を描くということは、独りであるということとは無縁の場所にいるということなんだ。水墨を描くということは、自然との繋がりを見つめ、学び、その中に分かちがたく結びついている自分を感じていくことだ。その繋がりが与えてくれるものを感じることだ。その繋がりといっしょになって絵を描くことだ。p67
「才能やセンスなんて、絵を楽しんでいるかどうかに比べればどうということもない(略)絵にとっていちばんたいせつなのは生き生きと描くことだよ。そのとき、その瞬間をありのままに受け入れて楽しむこと。水墨画では少なくともそうだ。筆っていう心を掬いとる不思議な道具で描くからね。p141
「何も知らないってことがどれくらい大きな力になるのか、君はまだ気づいていないんだよ」「何も知らないことが力になるのですか?」「何もかもがありのまま映るでしょ?」p81

「線は、僕を描く」のまとめ

馴染みのなかった水墨画に一気に魅せられた良書でした。登場人物の紡ぐ言葉と著者の描写がとにかく綺麗で飽きずに惹かれていきます。

主人公の青山くんは常に自問自答をして、水墨画、生きることの本質に近づいていき、その過程に共感し、応援したくなります。

「水墨の本質はこの楽しさだよ。挑戦と失敗を繰り返して楽しさを生んでいくのが、絵を描くことだ。」など名言連発で飽きずに楽しめます。漫画も1~4巻まであるので、小説が苦手な方はこちらもどうぞ。

この記事で紹介する「線は、僕を描く」は「Amazon Audible」という本が聴けるアプリで聴くことができます。30日間無料体験ができる上、人気作品も1冊無料で読めるので、試したことがない人はぜひデビューしてみてください。
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